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No.53 仲間との思い出の家庭菜園

No.53 仲間との思い出の家庭菜園

先日、埼玉の友人宅を訪ねました。去年まで同じ社宅の同じ階に住んでいた友人で、何かと言ってはつるんでいた仲間でもあります。「仲間」というのは、私たちは同じ趣味を持ち、休日にはよく2人で貸農園を訪ねては土にまみれていたんですよね。

何年か前の夏の時期、冷夏と長雨の影響で野菜や果物が値上がりしたことがあったのですが、その時私と彼女はベランダ菜園に精を出し、それでも物足りなくて近くの農家さんから月借りで小さな畑を借りることにしたのです。最初は戸惑っていた私たちですが、その農家さんの手ほどきもあって、スイカを育てたりメロンに挑戦しようという程度には土に親しんでいたんですね。

野菜も簡単なものなら出来るようになり、収穫も2人のひそかな楽しみでした。ネギやジャガイモ、玉ねぎなどは多すぎて困るということはありませんから。その彼女が引っ越したのが去年の今頃で、埼玉県の吉川市に新居を構えたのです。隣の三郷市にご両親が住んでいることもあり、不安等はなかったようです。何よりも、兼業で農家を営む実家から米だの野菜だの届くらしく、とても喜んでいた位ですから。

もらった地図を頼りに彼女の家を訪ねた私、呼び鈴を押したら庭先から彼女の声が。庭に回ると、彼女が苗木を植え付けているところでした。久しぶりの彼女は、やっぱり土いじり。「実家からもらって、もう辞めたのかと…」「そんなわけないじゃない」水道で手を洗い、麦茶を運びながら彼女が言います。「猫の額程の庭でも、これがやりたくて一戸建ての分譲にしたんだから」。

その気持ちは、とても良く理解出来る。彼女と畑に通った日々が懐かしく甦り、ウルッとしそうになる私。「この辺りはいくら位するの?不動産を探してみようかな」。そうしたら、彼女と再び収穫談議を楽しむことが出来る。彼女が私の湿った気持ちを吹き飛ばすように笑って言った、「あなたはあなたで頑張りなさい。これから、ゴーヤで緑のカーテンも作るのよ」。緑のカーテンなら、社宅のベランダでも出来そうだ。「じゃあ、私はヘチマでやってみようかな、化粧水が作れるし」、久しぶりに私たちは顔を見合わせて笑った。