
さて、今日も公園の周りをジョギングしていくとするか!私は車の後部座席のスポーツバッグからランニングウエアを取り出し、車の中でサッと着がえる。革靴からジョギングシューズに履き替えて緑の中に立つと、気分がシャキッと身体が蘇るようだ。この瞬間と風を切って走っている時は余計な雑念は入り込んでくる隙もないし、習慣になってしまうと走れないと気持ち悪いのだ。
私の会社は新宿にあるのだが、支社がいくつかあって私は調布支社の所属になっている。営業関連の仕事だが、一部パソコンを使って完結させる業務も多い。元々は新宿で採用、仕事をしていた関係で住まいは都心にあったが、調布支社の所属になってからはすっかりこのエリアの虜になった。営業でこのエリアを回り営業後はジョギングやウォーキングで走り、朝から晩までこのエリアで生活していたようなものだった。
そんな私だったのでこのエリア、出来れば府中で住居を見つけたいと考えるのはごく当然の成り行きだった。新築は高いから中古で構わない、特にジョギングで走る森林公園の近辺に手頃な住宅が欲しい。2ベッドルーム、LDK、多少の庭があれば十分だ。と営業の合間に立ち寄った不動産業者に説明したら、「まだお若いのに、一生結婚しないおつもりですか」と逆に質問される。部屋数が少ないのでは?ということだろう。
「本当にこのエリアは良いところですよ、私も府中に住んでいますからね。ここの不動産を取り扱っていることに、誇りを持っているんです」、私の申込書をチェックし、彼は言った。「中古物件もあるにはありますが、リフォームしないと住めませんよ」それは百も承知だった。「古~い空家みたいなのでもいいよ」、最近空家が増えていると言うじゃないか。「…部屋数は本当に」私は笑って彼に答える。「良いんだよ、仕事とジョギングが恋人みたいなものだから」。