
不動産と言っても、空家問題に興味があります。実は家にも空家があり、どうしたものかと検討中なのです。この空家は母が長らく過ごした家、私の実家。結婚して町場に住まいを持った私と同居することを頑なに拒み、病院に入院するその日まで一人で過ごした家でした。「年をとると、知らない所では暮らせないもの」と言いながら、家の前の畑で野菜を育てたり、時々は近くに住む友達とお茶したりという生活を楽しんでいたようでした。
その家を相続して数年、荷物の整理に一度訪ねた以外は、一度も足を運んだことはありません。売るにしても場所と言い築年数の古さと言い、難しいだろうと考えています。では取り壊すかと言えば、何となく気が進まないのです。自分で使う気もないのに、あっさりと家を無くしてしまうのが躊躇われる。母の思い出が残っているからでしょうか。
ただ、いつまでものんびりと構えてはいられないということだけは承知しています。「空家対策特措法」が成立し、危険な空家に対しては行政が強制的に撤去出来るようになったこと、その最初のケースがテレビ放映されていたからです。空家を撤去して更地にすると固定資産税の優遇措置がなくなるのですが、家が無くなるのなら持っていても仕方ない土地であり中途半端な気持ちのまま思い悩んでいたのでした。
一度母の家を見に戻り、役場なりに相談してみようか。自治体で「空家バンク」というのを立ち上げているはず。それからどうするか対策を考えてみようか、今度こそ本気で。思い出があると言っても、使う気がないものをグズグズ持っていても何も生まない。思い出は私の心にしっかりとあれば良いのだ。そう考えがまとまると、気持ちが楽になりました。カレンダーの日にちを確かめる。今度の休日に家を見に行く。そして私は町役場の連絡先をスクロールし、発信ボタンを押したのだ。